難病とは、「治療方法が確立しておらず、治療が困難で慢性的な経過をたどり、長期の療養を必要とすることで大きな経済的負担を強いる」など、以下の特徴を持つ疾患を指します。
また、難病対策は、疾病の治療研究の推進を目的としていた制度に由来しており、治療研究と患者支援が目的となっています。
ただし、がんや精神疾患、感染症、アレルギー疾患など、個別の施策体系が樹立されているものは除かれます。
また、難病は治療が困難で慢性的な経過をたどり、本人や家族の経済的・身体的・精神的負担が大きいとされる疾患です。現在、日本では「123種類が特定疾患」として指定されており、多種多様で、糖尿病や高血圧と変わることがない疾患もあります。
難病のある人は、定期健診や自己管理の継続に加えて、学校や職場の配慮等があれば問題なく学び、働けるようになっている人が多いのですが、病気自体は完治することがないのです。
その点、糖尿病などの持病をもつ人と同じであって、一生を病気の治療に費やすのではなく、仕事を通して社会との関係や生きがい、経済的自立を望むのは当然のことです。
そのため難病のある人は「持病をもつ労働者」と、視点を変えることが必要です。
以上から難病とは治療が困難で慢性的な経過をたどり、本人や家族の負担が大きい疾患であることが理解できます。しかし、適切な治療や自己管理を行うことで難病のある人でも普通の生活を送ることが可能であり、社会生活を送る上での支援も進んでいます。
指定難病とは、国が「難病の患者に対する医療等に関する法律」に定められる基準に基づいて医療費助成制度の対象としている難病を「指定難病」と呼び、「他の施策体系が樹立されていない疾病であり、かつ、発病の機構が明らかでなく、特定の基準を満たす難病」であり、以下の特徴を持つ疾患を指します。
1. 希少性:患者数が本邦において一定の人数(人口の約0.1%程度)に達しないこと。指定難病は、厚生労働省によって国の指定を受けた疾患であり、一般的な病気ではなく極めてまれな病気であるため、患者に対して特定医療制度が提供されます。指定難病には厚生労働省が定めた基準に従って指定されており、その基準は病気の稀さ、重症度、治療法の確立度などが考慮されます。
指定難病の患者は、医療費助成の対象となり、そのための制度が整備されています。指定難病のある人が治療と両立しながら社会生活を送れるように支援をすることが目指されています。
指定難病の種類は多く、「2024年4月時点では、341疾患が指定難病」とされています。
厚生労働省:指定難病患者データベース及び小児慢性特定疾病児童等データベースに関する医療機関向け周知(指定難病コード表より)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nanbyou/index_00003.html
これらの疾患は研究班及び関係学会が整理した情報に基づき、指定難病検討委員会などの審議結果を踏まえ厚生労働省が指定しています。
以上から、指定難病とは特定の基準を満たす難病であり、その患者に対して特定の医療制度が提供されることが理解できます。また、指定難病のある人でも適切な治療や自己管理を行うことで、普通の生活を送ることが可能であり、社会生活を送る上での支援も進んでいます。
希少疾患とは、「特定の基準を満たす難病」であり、以下の特徴を持つ疾患を指します。
1. 希少性:患者数が一定の人数に達しないこと。具体的には、日本では国内患者数が5万人以下、米国では20万人未満、欧州では患者数が1万人に5人未満と定められています。希少疾患は、通常は遺伝性であり、それゆえに通常は一生を患う慢性疾患であるとされています。また、希少疾患の種類はあまりにも多く、例外が多いこともまた希少疾患の特徴であるとされています。
以上から、希少疾患とは特定の基準を満たす難病であり、その患者に対して特定の医療制度が提供されることが理解できます。しかしながら、希少疾病の患者を支える2つの制度は充実してきているとはいえ、患者の立場に立つとまだまだ不十分な側面が残っているのが実情です。
難病に指定されていないために20歳で医療費助成が打ち切られる疾病があるのもそのひとつです。また、医療費助成だけでなく、成人への移行期支援、心の支えや就労支援、治療法や治療薬の開発など、希少疾病を抱える患者とそのご家族を社会全体で支えるしくみの構築が必要です。
・患者の生命予後が限られていること
・QOL(生活の質)を重視 →在宅ケアの必要性
・症状のコントロールの重要性
・精神面のケアの重要性
・きょうだいじケアを含むご家族ケアの重要性
・多職種連携が必要なこと など
(2015年 在宅医療テキスト 第3版 勇美記念財団を改変し引用)
・子どもの最善の利益を最優先に尊重する
・対象となる疾患が多く、稀な疾患が多く、経過も異なる
・時として進行が急速で予測が困難
・発達、成長を考慮しなければならない
・知的、或いはコミュニケーションに障害がある
・子どもへのケアに特殊な技術を要する
・ご家族ケアの対象が広い(兄弟姉妹・祖父祖母など)
・子どもの自己決定権など、倫理的配慮の必要性が高い
・学校、地域、病院など、拘わる職種が多い
・子どもとそのご家族に拘わる職員の精神的負担が大きい
・ご家族で生活することが決定的に重要である
・これからの人生が失われてしまうことへの大きな喪失体験が待っている
・LTCにある子どもたちが成長過程において亡くなるケースが多い
など
ホスピスケア(HOSPICE)の言葉の意味は以下の単語から成り立っています。
ホスピスケアでは、身体的なケアに加え、精神的、社会的側面にも考慮したうえで患者のケアをすることを目的としています。
緩和ケアを受診することで身体的、精神的な苦痛を和らげ、患者の生活の質(QOL)を重病になる前の状態からなるべく低下させないようにすることを目的としています。具体的に以下の通りです。
・気持ちの面での苦痛
治療方法、治療環境などによって苦痛の種類は様々ですが、緩和ケアではこのような身体と心の痛みを和らげることで、治療に対して長期的に向き合えるようにします。
医療的ケア児とは、日常的に医療的ケアが必要な、以下の特徴を持つ児童を指します。
1. 日常的な医療的ケアが必要:医療的ケア児は、日常生活を営むために恒常的に医療的ケアを受けることが不可欠です。具体的には、人工呼吸器や胃ろう等を使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な児童を指します。医療的ケア児は、医学の進歩を背景としてNICU等に長期入院した後、引き続き人工呼吸器や胃ろう等を使用し、たんの吸引等の医療的ケアが日常的に必要な子どもたちを指します。
また、日常的に外出することがままならず、在宅での医療的ケアを必要とする重度子どもたちと、知的・肢体に障害は無く自力歩行可能な子どもたちも存在します。
※ 下図に児童福祉法における「医療的ケア児の概念整理」を引用掲載します。
全国で約2万人いると推計されており、栃木県内では令和6年4月時点において「365名」が医療的ケア児として専門的な支援を受けていますが、医療的ケア児とそのご家族の日常的な負担はまだまだ軽減されるべき課題があります。
『医療的ケア児とその家族の生活実態調査』によると、71.1%の医ケア児の親が慢性的睡眠不足を感じています。88%の医ケア児の親が就職を希望していますが、うち、希望する形態で仕事ができている方は7%のみです。社会からの孤立を感じる親は51.3%、外出を困難を感じるご家族は65.3%にのぼります。
医ケア児の親たちは、特にママたちは、勤務、スキルアップ、社会参加などをあきらめがちになります。そこで「那須こどもホスピスプロジェクト」では、医療的ケア児の親が社会活動を隙間時間またはフルタイムでも行える就業応援プランをご用意する予定です。
医療的ケア児とその家族への支援は多岐にわたります。以下にいくつかの具体的な支援方法を挙げてみます。
これらの支援は、医療的ケア児とその家族が安心して生活できるように、社会全体で支援することが重要です。また、具体的な支援方法は、個々の医療的ケア児の状況に応じて、切れ目なく行われることが求められます。そのため、医療的ケア児とその家族への支援には多職種(他職種)連携が必要不可欠です。
小児緩和ケアとは、生命が脅かされる状況にある子どもとそのご家族が、どこにいても、どんなときでも、その子らしく、その家族らしく「生きる」ことを支えるケアのことを指します。
WHOでは、小児緩和ケアを以下のように定義しています。
1. 小児緩和ケアは小児の身体・心・精神の総合ケアで、家族支援を含む。これらの定義から小児緩和ケアは、子どもとそのご家族がその子らしく、その家族らしく「生きる」ことを支えるための総合的なケアであることが理解できます。また、小児緩和ケアは診断時から始まり、治療の有無に関わらず続けられ、身体的・心理的・社会的苦痛を検査し軽減することが求められます。
小児緩和ケアの必要な子どもとそのご家族への支援は多岐にわたります。以下にいくつかの具体的な支援方法を挙げてみます。
1. 情報提供:小児緩和ケアに関する情報を提供し、家族が適切なケアを受けられるようにすることが重要です。これらの支援は、小児緩和ケアの必要な子どもとその家族が安心して生活できるように、社会全体で支援することが重要です。また、具体的な支援方法は、個々の子どもの病態に応じて、切れ目なく行われることが求められます。そのため、小児緩和ケアの必要な子どもとその家族への支援には、多職種(他職種)連携が必要不可欠です。
国の小児慢性特定疾病対策は、改正児童福祉法を根拠法とする福祉的要素の強い施策です。
その目的は、慢性疾病を抱える子どもの健全育成を支援することにあります。
小児慢性特定疾病とは、特定の基準を満たす難病であり、その患者に対して特定の医療制度が提供され、以下の特徴を持つ疾患を指します。
これらの条件を満たす疾患が小児慢性特定疾病とされ、これらの疾患にかかっている18歳未満の児童(一部の場合は20歳未満まで)に対して、医療費の自己負担分の一部を助成する制度が設けられています。
2024年4月1日現在、小児慢性特定疾病対策の対象疾病は「16疾患群845疾病」あります。これらの疾患は、治療が長期にわたることなどから治療費負担が大きくなることが多いため、医療費助成などの支援を行う疾患として指定されています。
【現法的根拠の問題点】
小児慢性特定疾病には「希少疾病である、患者数が少ない」という要件がなく、比較的患者数が多い疾患(例えば「喘息」など)も含まれています。このため、小児慢性特定疾病の罹患児が成人した際に、指定難病の要件(希少疾病である、患者数が少ない)に該当せず、医療費助成が打ち切られるケースが少なくない問題があります。
また、両制度で疾患の括りが異なるため、疾患数を直接比較できずわかりにくくなっているという面もあります。
【例】尿素サイクル異常症
尿素サイクル異常症は、先天代謝異常症(生まれながらに代謝酵素等に異常があり生命や発育に支障をきたす疾患)
尿素サイクル異常症は、体で不要となったアミノ酸を複数の酵素で尿素に変える「尿素サイクル」と呼ばれる酵素群のひとつに異常があって、アミノ酸を代謝することができずに、アミノ酸からできるアンモニアが体にたまってしまう高アンモニア血症をきたす疾患群です。異常な酵素ごとにそれぞれ異なる病名がつけられているために、小児慢性特定疾病の分類では、尿素サイクル異常症は疾患群のため、小児慢性特定疾病では6つの疾病となります。
一方、指定難病では「尿素サイクル異常症」として1つの疾患として指定されています。